そんなハームネーターに対し、僕も最初のうちは目も合わさずに
「はあ、そうなんですかー」
ぐらいしか言わなかったが、あまりにも毎度同じことを言ってくるものだから途中でだんだん面白くなってきてしまった。
「○○さん、それはやばいですよ!
今すぐ工場長のとこに行って、バシッと言ってやった方がいいですよ!」
などと思いつくままに言っていたら、数日後、本当に工場長の部屋に行ってしまった。
きっと、彼はバシッと言ったのだろう。
翌日、ハームネーターと僕が工場のライン長に呼ばれた。
"あの、もう来なくても大丈夫なんで"
こうして僕たちのハム工場の日々は終わったのだった。
いつものように二人でタイムカードを押して、一緒に工場を出た。そして、いつものように"おつかれさまでした"と言って僕らは別れた。
「I'll be back」
さすがに親指はあげていないけど、そんなふうに勝手にシュワルツネッガーの声を頭の中で再生させながら、去りゆく後ろ姿を見ていた。
その背中は、なんだか清々しさを感じるほどで、妙に夕日に映えていたなあ。
帰り道、自販機で缶コーヒーを買った。チャイムの中でぼんやりと浮間の街が揺れていた。
いやはや別れの季節である。
彼は元気だろうか。まだ追われているのかしら。逃げ切れたのならいいけれど。